連日、円安のニュースを耳にする機会が多くなったと思います。
円安が私たちの生活に、具体的にどのような影響があるのでしょうか。
この記事では、円安のメリット・デメリットの解説と、円安の対策も紹介します。
円安とは何か?
日本の通貨、円の価値が他の通貨に比べて低くなっている状態を「円安」といいます。
一国の通貨を、別の国の通貨に換算する際の比率によって決まります。その為替レートの動き一つで、国内経済の状況が大きく変わることもあるのです。
例えば、1万円をドルに両替した場合、為替相場が「1ドル/100円」であれば100ドルになります。もし為替相場が「1ドル/80円」の場合、1万円を両替すると125ドルになります。
海外旅行で買い物するときにを例にしましょう。
1万円を両替「1ドル/80円」=125ドル
✅125ドルの物を購入するとき、1万円が必要
1万円を両替「1ドル/125円」=80ドル(円安)
✅125ドルの物をっ購入する場合、15625円が必要
125ドルの物を購入する場合、為替によって多くの円が必要になってきます。
もちろん企業にとっても影響があります。
日本のような輸出国である場合、円安は輸出を促進し、経済活動にプラスの影響を与えます。反対に、円高になると輸出が減少し、国内経済にマイナスの影響を及ぼすことになります。
そのため、為替レートの動きを予測し、適切に対応することが求められています。
円安のメリットとデメリット
円安には、利点と欠点があります。まず、そのメリットから見ていきましょう。
円安のメリット
円安になると、海外から見て日本の製品が安くなります。
つまり、輸出が増え、製造業等の業績向上に繋がります。また、日本企業の海外での収益が円換算で増えるため、企業収益も向上します。
そして、外国人観光客が日本を訪れる際にも費用が安くなるため、観光収入も増えるでしょう。
「10月の訪日外客数は、2019年同月比100.8%の2,516,500人となり、新型コロナウイルス感染症拡大後初めて2019年同月を超えた。」
※参照元:日本政府観光局
これらが円安のメリットです。
円安のデメリット
次に、デメリットも見ていきましょう。
円安になると、輸入コストが増大し、エネルギーや食品など日本に必要な輸入品の価格が上昇します。
国内の物価が上昇し、生活費が高くなるという問題が出てきます。また、円安は海外旅行のコストが高くなるため、個人の生活にも直接影響を及ぼします。
円安は経済を活性化させる一方で、消費者の負担も大きくなるという二面性を持っているのです。
円安が仕事に及ぼす影響
円安は、国や企業、個々の生活など様々な面で影響を及ぼします。一見、良い面も悪い面もあり、その影響を最大限に活かすか、逆にリスク分散するかがビジネス運営の鍵となるでしょう。
その詳細な内容について、輸出産業、輸入産業、中小企業のそれぞれの視点から見ていきます。
輸出産業への影響
円安は輸出産業にとって、一般的には好影響を与えます。
なぜなら外国から見れば日本の商品やサービスが安くなり、これにより輸出が増加するからです。
例えば、自動車産業や電機産業など、輸出に大きく依存している産業では特にその恩恵は大きいです。一方で、原材料やエネルギーの輸入コストが高まるため、その影響を受けやすい業種では負の影響もあります。
円安の影響は産業により異なるので、その状況を見極め対策を立てていくことが重要です。
トヨタ自動車や三菱商事、三井物産など輸出に強い企業を中心に最終利益が過去最高を更新するケースが相次いでいます。
輸入産業への影響
輸入産業にとって円安は利益圧迫の一因となります。
というのも、円安が進行すると輸入費用が高くなり、それに伴い商品の仕入れコストが増えるからです。その結果、原価を上回る程に商品価格を上げなければならず、顧客からの反発が予想されます。
また、エネルギー資源や食材など、生活必需品を扱う企業においては、生活者へのインフレを引き起こす可能性があるため、その対策も必要となるでしょう。
円安が進むと、企業だけでなく消費者にも影響を及ぼすため、そのバランスを保つことが求められます。
中小企業に対する影響
中小企業にとっても、円安は大きな影響を及ぼします。
とはいえ、その影響は必ずしもネガティブとは限りません。
輸出を手がけている中小企業にとっては、円安はビジネスチャンスとなるでしょう。一方で、輸入商品を扱っている中小企業や輸入に大きく依存している企業は円安の影響を受けやすいでしょう。さらに、経済全体が円安に伴いインフレに向かうと、企業のコスト負担が増大します。
言い換えれば、円安が進行しつつある現状に対して、どのように対策を講じうまく対応していくかが中小企業の存続に直結する課題となります。
生活への影響を知る
我々の社会生活にはさまざまな影響があるのは明らかです。
経済状況や社会的事件、天候による気候変動等、これらの要素が絡み合って我々の生活は形成されます。特に注目すべきはガソリン価格などの変動です。
こうした変動は、我々の生活に直接的、間接的に影響を与えるものなのです。
物価への影響
物価の変動は素直な形で我々の経済生活に影響を与えます。
例えば、インフレが進行すれば、同じ金額でもより少ない商品やサービスを購入するしかありません。
反対にデフレーションが進行すると、物価が下がります。消費者にとってはお得に感じられるかもしれませんが、経済全体の活動を低下させ、長期的には逆効果となる可能性もあります。
こうした物価変動の背景には、国内外の様々な要因が絡み合っていて、それらを理解することは容易なことではありません。
旅行・留学に対する影響
旅行や留学もまた、経済状況や社会情勢の影響を受けます。
特に通貨の強弱は大いに関わります。自国通貨が弱い状況では、海外旅行や留学は高額になりがちです。生活水準や購買力の違いからくるもので、これもまた物価の影響と言えます。
ガソリン価格とへの影響
ガソリン価格は原油価格に大きく影響を受け、それは国際情勢や市場の需要供給により決定されます。価格が上昇すれば車の運転費用は増加し、それが旅行費用や物流コストに影響を及ぼし、結果的に物価全体に影響を及ぼす可能性があります。
逆に、価格が下がればそれらのコストは軽減しますが、それは石油関連産業の利益を圧迫し、雇用の状況に影響を及ぼす可能性があります。これらの動きを見ていくことで、より深く生活環境の理解を進めていくことができるでしょう。
円安の原因と背景
そもそも円安となる原因は、何があげられるでしょうか。
直接的な要因としては、国内外の経済状況、日本銀行の政策金利、または市場の心理が円安をもたらしていると言えます。
国内外の経済状況
国内外の経済状況は、通貨の価値を大きく左右します。
経済状況が投資家の通貨選択や、中央銀行の金融政策に直接影響を及ぼすからです。国内の経済状況が悪化すると、投資家はリスクを避けるために日本円を売って他の安全な通貨を求めます。その結果、大量の日本円売りが発生し、円安へとつながります。
また、国際的な景気後退や経済危機が起きれば、海外からも円の売りが生まれ、円安に拍車をかけます。特に、アメリカ経済が好調なとき、米ドルが強くなると、ドル高・円安の流れが形成されやすいです。
国内外の経済状況は、逐一変動し、その都度円安の深度や持続性に影響を与えます。
日本の政策金利
政策金利とは、日本銀行が金融政策を操作するための道具の一つで、金利を下げると貸出が活発化し、逆に金利を上げると貸出が抑制されます。多くの場合、好景気時にはインフレ抑制のために金利を上げ、不景気時には経済を刺激するために金利を下げるという政策が採られます。
通貨の価値に大きな影響を与えます。
具体的には、日本の政策金利が他国に比べて低くなると、その差が投資家の投機的な資金移動を引き起こします。低金利の日本から、高金利の海外へ資金が流出すると、日本円の需要が減るため、円安が進行します。
さらに、この流れが市場心理に影響を与え、一気に円安が進むこともあります。
円安が進行するときの対策
このまま円安が進行すると、個々の生活、企業経営、そして国家経済まで影響が及びます。特に個人や企業にとっては、大きなリスク要因となり、予想外の損失を招く可能性があります。
そこで、円安が進行したときの具体的対策について考えてみましょう。
金融資産の保全策
まず個人の場合、金融資産の保全が重要になります。円安が進行し、国内商品価格が上昇すると、生活費の増加や株価変動などによる資産価値の減少が起こります。そのため、あらかじめリスクヘッジのため、対策を講じておくことが必要です。
具体的には、外国為替投資や金融商品の分散投資などが効果的な手段です。また、定期預金を外貨建てにするなど、円以外の資産保有もリスクヘッジになります。
これらの対策をするうえで、金融情報を常時チェックすることが必要となります。
市場ニュースなどを確認することで、円安の進行状況や金融商品の動向を把握し、適切な判断を下すことが出来るようになります。
企業のリスクマネジメント
企業にとってのリスクマネジメントは重要です。円安のリスクを適切に管理し、企業経営を維持する必要があります。従来からの輸出業者にとっては円安は儲けに繋がる一方で、原材料を輸入する企業や外国からの資金調達で借金をおっている企業にとっては、コスト増に直結します。
円安の進行に対応する一つの策として、企業は円高ヘッジをすることでリスクを回避します。円が下がるリスクから企業の経済活動を守る手段で、為替予約や通貨オプション取引を活用します。また、円安リスクを分散させるために、多種多様な商品を取り扱い、複数の国や地域に輸出をするなど、経営そのものの多角化を進めることも重要です。
このように対策を講じることが、円安進行のリスクから自己を守り、逆に新たなビジネスチャンスに繋がる可能性を秘めています。
円安の今後の見通し
気になるのが今後の見通しです。
特に、アメリカと中国の貿易戦争や新興国通貨の危機などの国際情勢の変動、そして日本国内の景気後退の影響が大きいでしょう。
加えて、今後の円安の見通しについては、金融政策の動向や企業の海外進出といった要素まで見据える必要があります。これらを外国為替市場や金融市場の専門家たちがどう解釈するかによって、それぞれの通貨の平均取引価格が決まっていきます。
専門家の見解
専門家たちは、円安が更に厳しくなる可能性があると警告しています。具体的には、アメリカのFRB(連邦準備制度)の金利上昇やECB(ヨーロッパ中央銀行)の金利引き上げが進むとの見方が強くなっており、これらの要因が円安を加速させるとの見方が主流です。
また、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済停滞の影響を受けて、中央銀行が金融緩和策を採用し、加えて政府が大規模な経済対策を打つ可能性もあるとの見方が出ています。これらが揃えば、より円安が進む可能性が高まるでしょう。
市場トレンドとの関連性
市場トレンドと円安の関連性についても考えてみましょう。
一般に、世界経済が好調な時期は、投資家がリスクをとる傾向にあるため、安全な資産である円が売られ、円安が進みます。その反対に、経済が不安定な時期には、投資家がリスクを避ける傾向にあり、その結果、円が買われ、円高になる傾向にあります。
そのため、世界的な景気動向や市場のリスク感情が円安・円高を左右する大きな要因となります。以上の観点から、これらの指標に注目しながら市場トレンドと円安の関連性を探ることが重要となるでしょう。
円安と他通貨の影響
日本の通貨である円が安くなること、すなわち円安が生じた場合、それは他の通貨に対する円の価値が下落した状態を表しています。これは、日本経済だけでなく、世界経済にも大きな影響を及ぼすことがあります。円安になれば、海外からの輸入が増加し、支払い余力が相対的に減少します。これにより、消費者は商品価格の上昇や購買力の低下に直面する可能性があります。
ドル・ユーロとの関連性
円安が進行すると、ドル・ユーロといった主要通貨との現象の関連性が顕著に表れます。
特に、日本が莫大なドル債券を保有していることから、ドル高・円安の展開は、日本の資産価格に多大な影響を及ぼします。
ドル高・円安は、輸出が競争力を持つ一方で、輸入価格が上昇しインフレを引き起こす可能性があります。したがって、円安進行はドル・ユーロと密接な関連性を持つと言えるのです。
また、ユーロとの関係性についても、円安は深い関わりを持ちます。ユーロ圏の多くの国が日本の輸出先であるため、円安はこれらの国における日本製品の競争力を高めることになります。しかし、ユーロ高・円安進行は、ユーロ圏からの輸入価格を押し上げ、インフレの引き金になる恐れがあります。
したがって、円安の進行は、ドルと同様にユーロとも深く結びついているのです。
新興国通貨との相関性
新興国の通貨に対する円安の影響は、今まで取り上げてきたドル・ユーロとは異なる観点から理解することが求められます。新興国の多くは経済発展と共に、その価値を大いに評価されたとしても、経済変動に伴い通貨価値が大きく揺らぐことも少なくありません。
このことから、新興国通貨と日本円との間には大きな相関性が存在すると言えます。
円安が進行すると、新興国通貨が強くなるという相関性があります。これは、新興国に対する投資が増え、その結果新興国通貨の価値が上昇するためです。しかし、円安が強まりすぎると世界的な資金流出が起こり、新興国経済に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
また、新興国通貨が強まると、その国の輸出競争力が低下し、経済的な困難に直面する可能性もあります。このように、新興国通貨と日本円との相関性は複雑で、他通貨との関連とは異なる観点から考察する必要があります。
まとめ
ここまで円安という状況は、我々の経済圏にどのような影響があるか解説しました。
円安が進行するというニュースをただ悲観して見るのではなく、リスクヘッジとして外貨を持つのも手段です。
個人でできることは限定的ですが、円安・円高に備えた資産運用・防衛策を常に考えておきましょう。